家財運び出しから展示品が出来るまで

家財運び出しから展示品が出来るまで~家の女たちの記録

家の女たちの記録

 平成13年、熊谷家住宅の保存修理工事が始まり、建物内に残されていた家財の運び出しが始まりまし た(写真1)。 

 運び出した家財は、使わなくなった小学校の体育館 いっぱいになりました(写真2)。

 これらの家財の調査を行うため、大田市のパート職員として集まったのは、地元の素人の女性たちでした。 小泉和子氏(昭和のくらし博物館館長)の指導をうけながら、まず家財調査から始めました。

 ひとつひとつ丁寧に埃を払い、計測、写真撮影、名前・年代調べなどを行い、カードに記入(写真3)。 整理番号を付けて収蔵しました(写真4)。


写真1

写真2

写真3

写真4

 せっかく、調査をしたのだからと、地元の方々を 招いて研究発表会をおこない(写真5)、家財調査報告書(熊谷家住宅にて販売中)も作成しました。

 また、小林准士氏(島根大学准教授)指導のもと、 襖や壁、梁等の下張りに使われていた古文書剥がしにも挑戦しました(写真6.7)。 約4年間かけて調査した膨大な家財は、総数3291点にのぼりました(写真8)。


写真5

写真6

写真7

写真8

 その後一般公開に向けて、これらの家財を活かした展示を行うことになりました。
 
 残っていた家財は量こそ膨大でしたが、傷みもひどく、また当然あるはずのものも残っていませんでした。作業はもっぱら再生と廃物利用、修理修繕に終始することとなりました。

◎古い布団の再利用

古い布団は校庭に干し(写真9)、綿と側に分けます(写真10)。側はいい所をとって、店暖簾や座布団カバーなどに再生します(写真11)。


写真9

写真10

写真11



◎子供用の下駄の修理

塗りが剥がれてボロボロになった子供用の下駄(写真12)。アクリル絵の具で塗り直し、鼻緒をつけ替えました(写真13)。


写真12

写真13

◎兵児帯や鏡台掛けの染め直し

 今風の兵児帯は、閉店した薬局から染め粉をもらい染め直しました(写真14.15)。鏡台掛けは、縮緬の重ね下着を染め直して家紋を刺繍しました(写真16)


写真14

写真15

写真16

◎飲食具の展示~食品サンプルを手作り!

 また、たくさん残っていた飲食具がどのように使われていたのか、地域の郷土料理を調べ、その料理を手作りして展示することにしました。
 
 材料は発砲スチロールや紙粘土、色や質感の違う様々な布、プラスチックの使い捨てコップ、みかんのネットといった身近にあるいろんな物です。
 
 花見弁当の箱寿司(写真17)。お祭りの煮しめ(写真18.たけのこ)。鯛のお吸い物(写真19)。イカのお刺身(写真20)。法事饅頭(写真21)などなど・・・次々に作っていきました。


写真17

写真18

写真19

写真20

写真21

作業場は廃校になった元小学校の体育館。暑さ寒さとの戦いでしたが、本業は主婦。みんな活き活きと仕事をこなしていきました。また自分の力を生かせたという手応えと、創意工夫する面白さを知ったことは、大きな喜びでした。(写真22)


写真22

平成18年の一般公開後も、展示の更新は続き、誇りをもって、建物の維持管理と来館者への案内を行っています。

家の女たちの努力で完成した熊谷家住宅くらしを伝える展示品の紹介です。